2010年4月23日

Brio再レビュー

4月に入ってからと言うもの、この天候の不安定さにかまけてまたまたブログを放ったらかしにしてしまいました。
ということで、2月の終わりに購入をレビューしたアンブシュアのトレーニング用具Brio(ブリオ)のその後を少し書いておこうと思います。その時のエントリはこちら
brio.jpgその後2ヶ月間、断続的ですが使用してみました(言わずもがなのことですが、このレビューはあくまで私個人の感想であり、他の方の印象と異なる部分があるかも知れませんが、私個人の率直な感想ですので、その点お含みおき下さい)。
使用の方法は、主に練習開始前、休憩中、練習再開前といったタイミングでそれぞれ2,3分と、このブログを書いている最中のような書き物の時間に加え続けて5分、といったところ。ハイトーンの為のアンブシュアの筋肉を鍛える、といった観点を第一義に考えるのであれば、後者のような練習法で、もう少し系統立てて使う必要があるかも知れません。

この2ヶ月間のブリオを使った個人的な練習ポイントは、「発音の瞬間のアパチュアの矯正」といった点にあります。大変個人的な問題で恐らく多くの人には当て嵌らないことだと思うのですが、最近、どうも低音域を吹くためにアパチュアを大きく取りすぎていたのではないか、と思うようになりました。「口を大きく開ける」ということに意識が行き過ぎて、発音の際に無理な力が大きくかかり、よって不自由を感じるのではないか。これを一度、ミニマムの力で発音できる状態を作って再考してみては、と思ったわけです。

練習のポイントは、
1.(発音する音のイメージで)加えた状態で息を吐く。ここでは唇の筋肉の力のみで器具を保持。
2.ここから手で軽く支えてゆっくりと前方に引いていき、丁度離れた瞬間でバズィングが開始する状態を作り、それを覚える。
3.器具なしで再現してみる。
4.楽器で再現してみる。
(近いうちに画像を付け加えます)

こういったエクササイズを続けてみると、鳴りにくいと感じていた音域が、実は発音の瞬間を自分で力んでいたことが判りました。いくつかの音では、音量やアタックのコントロールが格段に楽になりました。

この時期同時にマウスピースのエクササイズも並行していたので、完全にこの器具を使ったエクササイズのみの効果と言う事は出来ないと思うのですが、テューバで言えばF管の中低音域(lowC付近)でどうも行き詰まっている場合には、或いはヒントになるかも知れません。

引き続きハイトーンも含めて使ってみて、またレビューしてみようと思います。


2010年4月 8日

「サクバットの決意」CD発売

去る3月27日、「サクバットと仲間たち」でもご一緒した新日本フィルのトロンボーン奏者でサクバット奏者でもある宮下宣子さんのCD「サクバットの決意」がリリースされました。
タイトルの「サクバットの決意」とは、アルバム中のヒュームの「兵士の決意」をもじったもの。

sackbut.jpg「サクバットの決意」 (EZCD-10005)

宮下宣子(サクバット)、濱田芳通(コルネット)、西山まりえ(バロック・ハープ&レガール)、矢野薫(オルガン)、橋本晋哉(セルパン)

01.「兵士の決意」(トバイアス・ヒューム)
02.「別れのときに」(チプリアーノ・デ・ローレ/リッカルド・ロニョーニ)
03.「愛しい人よ」(アンドレア・ガブリエリ/ジョバンニ・バッサーノ)
04.「爽やかなガリヤルド」(トーマ・クレキヨン/ジョバンニ・バッサーノ)
05.「麗しきかな」(ジョバンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ/フランチェスコ・ロニョニーニ)
06.「バルバラ・ストロッツィの「秘密の恋人」を基にしたパッサカリオ」(濱田芳通)
07.「2声のためのカプリッチオ」(アンドレア・チーマ)
08.「若い娘(フランス古謡)」(濱田芳通)
09.「コレンテ第26番」(バルトロメオ・デ・セルマ・イ・セラベルデ)
10.「2声のためのカンツォン第26番」(バルトロメオ・デ・セルマ・イ・セラベルデ)
11.「幻想曲第9番」(ゲオルグ・フィリップ・テレマン)
12.「夕べの祈り」(ヘンリー・パーセル)
13.「チェロソナタ第6番」(アントニア・ヴィヴァルディ)
定価2000円

昨年8月に収録したものですが、このアルバムの中で4曲ほどセルパンでお手伝いしています(01,07,09,10)。
現在ダクさんをはじめとした都内各楽器店をはじめ順次販路を拡大中です。
また、info[at]shinyahashimoto.net 宛にメールいただいても、対応致します([at]を@に置き換えてお送りください)。

実は僕にとってもセルパンでの初めてのCDなのですが、裏表紙の楽器名が「Serpen」...「t」が足りないっっ(笑)。お買い上げの方、宜しければ「Serpent」と「t」を書き足してくださいね。

2010年4月 1日

「ひかるファンファーレ」

僕はチューバを始めたのは、今からおよそ26年前(26年!!)の4月、その頃の吹奏楽と言うのは、現在の隆盛に比べるとまだマイナーなジャンルと言う印象が拭えず、更に男子新入部員の何人かは、必ずチューバパートへと生贄として捧げられるのが伝統行事となっていたように思います(偏見?そういった風習は今も変わらないのかも知れませんが)。そして中学でチューバをやっていたことが高校に行って周りに知れるとそのままチューバに留まることを頼まれ、その後音楽の道に進もうとするときには消去法的にチューバを選ぶことに...最もそれはそれで当然と考えて、とっても楽しく生きていたわけですが。
まあとにかく「自分が吹奏楽部というところでチューバという楽器を吹いている」ということは、例えば人に話す場合にはどうせ言ってもちゃんとわかってくれないんだろうな、とか、ああ、あの楽器が伸び縮みするヤツ?とか言われちゃうんだろうな、といったある種の日陰者的諦観というか開き直りがあったように思いますし、それがチューバ奏者のメンタリティの構成要素の一つにあるように思います。

ですから、そんな入部から四半世紀が経った時、瀬川深の小説「チューバはうたう―mit Tuba」を読んだ時、小説の主人公がチューバ奏者で、しかも女性であることにをにわかに信じられずに戸惑いながらも、わけもなく嬉しく感じたことを覚えています。

 そして更に、21世紀も10年経ったとき、女子高生のチューバ奏者が主人公の4コママンガがあるらしい、とmixiのチューバコミュで密かに話題になります。田川ちょこの「ひかるファンファーレ」。帯には

ミニな彼女のどでかい相棒!!大きい、重い、超低音。ちっちゃい女子高生ひかると謎楽器の吹奏楽4コマ。

謎楽器って(笑)。それはともかく、どうやら事実らしい。こんなこと四半世紀戻ってみんなに話しても誰も信じてくれないだろうなぁ。更に裏には 

小動物系でミニな女の子ひかるが、あこがれの吹奏楽部でナゼか指名されたのは、女の子に似つかわしくない巨大な楽器...チューバ!重くて特大、可愛さゼロ。しかも普通は男子が吹く楽器...?強豪揃いの部員仲間と基本ふざけ合い時々支え合いピヨピヨけなげに吹いてます

何このリアルすぎる悲惨な設定(褒め言葉)?こんなの出して採算的に大丈夫なのか?売れるのか?(褒め言葉)?と思うや否や即購入。ご覧になっていただいて判る通り、齢38のオッサンが店頭で購入するのはやや気が引けるカワイイ表紙ですが、昨今ではネットで楽勝で購入が可能、客観的にはそれのほうがより怪しまれるんじゃないかとふと思いますが、チューバマンガを救うんだという意味不明の気概のもと乗り切ります。

それで、これが、面白い。面白かったです。作者の田川ちょこさんはチューバの経験が学生時代にあるようで、実際にこの楽器を吹いたことのある人間にしか判らない、悲哀に満ちた様々なあるあるネタが満載。
詳細はネタバレになるのでここでは書きませんが、本当にあーそうだったーとか、今でもそうだーとか膝を打つ話があって、チューバ奏者はかなり楽しめるように思います。
 これらの悲哀に満ちた、時としてかなり悲惨な自虐的ネタですが、しかしながらこれらは同時に実にあっけらかんと開放的に描かれています。ネタの悲惨さに相反するこの明るさは、一重に主人公のこのマイナーな楽器に注ぐ直向きな愛情から来るんだろうと思うんですが、そういった愛情が実際にチューバを吹いていた人だけでなく、他の人に対しても面白く笑える要因となっているんじゃないかと思います。
まあそんな大それたことを考えるでもなく、吹奏楽部をはじめとする部活の楽しさ満載なのでお薦め。特に今年4月に(不本意ながらも?)チューバに配属された人に贈りたい。みんながんばってー!!


因みに来る4月7日には第二巻が発売。この巻をもって完結する模様。