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「ひかるファンファーレ」

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僕はチューバを始めたのは、今からおよそ26年前(26年!!)の4月、その頃の吹奏楽と言うのは、現在の隆盛に比べるとまだマイナーなジャンルと言う印象が拭えず、更に男子新入部員の何人かは、必ずチューバパートへと生贄として捧げられるのが伝統行事となっていたように思います(偏見?そういった風習は今も変わらないのかも知れませんが)。そして中学でチューバをやっていたことが高校に行って周りに知れるとそのままチューバに留まることを頼まれ、その後音楽の道に進もうとするときには消去法的にチューバを選ぶことに...最もそれはそれで当然と考えて、とっても楽しく生きていたわけですが。
まあとにかく「自分が吹奏楽部というところでチューバという楽器を吹いている」ということは、例えば人に話す場合にはどうせ言ってもちゃんとわかってくれないんだろうな、とか、ああ、あの楽器が伸び縮みするヤツ?とか言われちゃうんだろうな、といったある種の日陰者的諦観というか開き直りがあったように思いますし、それがチューバ奏者のメンタリティの構成要素の一つにあるように思います。

ですから、そんな入部から四半世紀が経った時、瀬川深の小説「チューバはうたう―mit Tuba」を読んだ時、小説の主人公がチューバ奏者で、しかも女性であることにをにわかに信じられずに戸惑いながらも、わけもなく嬉しく感じたことを覚えています。

 そして更に、21世紀も10年経ったとき、女子高生のチューバ奏者が主人公の4コママンガがあるらしい、とmixiのチューバコミュで密かに話題になります。田川ちょこの「ひかるファンファーレ」。帯には

ミニな彼女のどでかい相棒!!大きい、重い、超低音。ちっちゃい女子高生ひかると謎楽器の吹奏楽4コマ。

謎楽器って(笑)。それはともかく、どうやら事実らしい。こんなこと四半世紀戻ってみんなに話しても誰も信じてくれないだろうなぁ。更に裏には 

小動物系でミニな女の子ひかるが、あこがれの吹奏楽部でナゼか指名されたのは、女の子に似つかわしくない巨大な楽器...チューバ!重くて特大、可愛さゼロ。しかも普通は男子が吹く楽器...?強豪揃いの部員仲間と基本ふざけ合い時々支え合いピヨピヨけなげに吹いてます

何このリアルすぎる悲惨な設定(褒め言葉)?こんなの出して採算的に大丈夫なのか?売れるのか?(褒め言葉)?と思うや否や即購入。ご覧になっていただいて判る通り、齢38のオッサンが店頭で購入するのはやや気が引けるカワイイ表紙ですが、昨今ではネットで楽勝で購入が可能、客観的にはそれのほうがより怪しまれるんじゃないかとふと思いますが、チューバマンガを救うんだという意味不明の気概のもと乗り切ります。

それで、これが、面白い。面白かったです。作者の田川ちょこさんはチューバの経験が学生時代にあるようで、実際にこの楽器を吹いたことのある人間にしか判らない、悲哀に満ちた様々なあるあるネタが満載。
詳細はネタバレになるのでここでは書きませんが、本当にあーそうだったーとか、今でもそうだーとか膝を打つ話があって、チューバ奏者はかなり楽しめるように思います。
 これらの悲哀に満ちた、時としてかなり悲惨な自虐的ネタですが、しかしながらこれらは同時に実にあっけらかんと開放的に描かれています。ネタの悲惨さに相反するこの明るさは、一重に主人公のこのマイナーな楽器に注ぐ直向きな愛情から来るんだろうと思うんですが、そういった愛情が実際にチューバを吹いていた人だけでなく、他の人に対しても面白く笑える要因となっているんじゃないかと思います。
まあそんな大それたことを考えるでもなく、吹奏楽部をはじめとする部活の楽しさ満載なのでお薦め。特に今年4月に(不本意ながらも?)チューバに配属された人に贈りたい。みんながんばってー!!


因みに来る4月7日には第二巻が発売。この巻をもって完結する模様。

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