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The tuba in my life:file09.チューバの現在

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さて、9回に分けてお送りしてきた3/30のコンサートのコンセプトですが、最後はチューバとピアノのために作曲された田中作品、そして今回委嘱した曲のテキストです。
全体をまとめたプログラムに付いては後日改めてエントリを起こしたいと思います。


■チューバの現在:Transformを抜け出して

チューバに限らずどの楽器でもそうだが、演奏家は古い曲だけではなく同時代の新しい音楽も手がける。西洋音楽の歴史は新曲の誕生と淘汰だが、生き残った作品は古典となってTransformの対象になり得る。マショーもバッハもシューベルトもベートーヴェンも、自分の作品が見知らぬ楽器によって演奏し直されるとは思っていなかったのと同様に、どのような新しい音楽も将来どのように状態変化(Transform)させられるのかは分からない。Transformがリコンポジション(再作曲)によって「新しいオリジナル」を作ることなのだとすれば、元の作品は新しい作品のための素材(ネタ)の次元に置かれることを意味する。まだ素材化されていない状態を「ピュアなオリジナル」というのだとしたら、新しい音楽がそうなのである。ではリコンポジションによって誕生した「新しいオリジナル」は「ピュアなオリジナル」たり得るのか(ああややこしい)? 歴史は螺旋のように循環する。

ともかく新しい楽器(や編成)であればあるほど、このような状況は起こりやすくなるはずだ。

田中吉史の《Aura di Bruno, oppure un'intervista interpretata da tuba e pianoforte(ブルーノのアウラ、あるいはチューバとピアノの通訳によるインタビュー)》という長いタイトルを持つ作品は、ブルーノ・マデルナ(1920-73)のインタビュー録音を素材に、作曲者の興味の対象である「話し言葉を器楽に移植すること」というコンセプトで書かれている。上に書いた文意とは異なるがこれもまた一種のTransformである。2008年橋本晋哉によって委嘱、同年「秋吉台の夏」で初演されている。

山本裕之の《輪郭主義I》は今回のために書き下ろされた。通常音律のピアノと徹底的な4分音を駆使したチューバはほとんどピッチ・ユニゾンで出会う機会がないが、それでいて概ね明確な線をなぞり続ける。そこに立ち現れるのは歪んだ輪郭であり、常に曖昧な線の提示である。橋本晋哉によって委嘱、2月末に完成。



今までのこのコンサートの関連記事はこちらから、またコンサート日時、場所の詳細は「続き」からどうぞ。

20100330.jpg2010年03月30日(火) 19時開演(18時半開場)
@渋谷・公園通りクラシックス (渋谷駅ハチ公口徒歩7分)

《入場料》 当日¥3,000 前売り¥2,500 (1ドリンク付)
■ご予約・お問い合わせ■
Tel: 03-3464-2701公園通りクラシックス(17:00-22:00、月曜定休)
Mail : info@shinyahashimoto.net

J.S.バッハ, パルティータ イ短調BWV1013 (1720頃).
L.v.ベートーヴェン, ソナタ ヘ長調Op.17 (1800).
F.シューベルト=山本裕之, シューベルト超有名歌曲集 (2010).
G.マショー=山本裕之, マショー三態 (2010).
田中吉史, Aura di Bruno (2008).
山本裕之, 輪郭主義I (2010).

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