2000年10月24日

サン=サーンス/チェロ協奏曲 第1番

Concerto pour Violoncello n. 1 la mineur op. 33
Camille Saint-Saëns(1835-1921)

チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33
カミーユ・サン=サーンス

 近代フランス音楽の基礎を形作ったともいえるサン=サーンスは、世代的にはベルリオーズ、リストからストラヴィンスキーまで重なることとなる長い音楽活動を通じて、ありとあらゆる分野(映画音楽までに至る)に於いて膨大な作品を残している。協奏曲の分野にはピアノ協奏曲5、ヴァイオリン協奏曲3、チェロ協奏曲2の計10曲があるが、その大半は彼が35歳から45歳の精力にあふれた時期に作曲されている。この《チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33》もその時期の作品で、1872年から73年にかけて作曲され、当時パリ音楽院の教授であったオーギュスト・トルベック Auguste Tolbecque (1830-1919) に捧げられ、彼自身によって初演された。尚、前年に《チェロソナタ 第1番 ハ短調 作品32》が作曲されていることは興味深い。

この協奏曲は、その調性と単一楽章の構成という点から、シューマンのチェロ協奏曲を連想させるが、サン=サーンスは構造の一貫性のうえでより徹底しており、古典的な3部分を持った大きな単一楽章、といった感がある。
第1部はアレグロ・ノン・トロッポ、2/2拍子でソナタ形式が用いられているが、再現部においては第1主題は現れない。続く第2部はアレグレット・コン・モート、変ロ長調、3/4拍子で擬古典的な主題が特徴的である。第3部は第1部と同じ拍子、同じテンポ、変ロ長調から始まり、すぐにニ短調に転調し、冒頭の主題を軸とした独奏チェロの技巧的なパッセージが繰り広げられる。全体として冒頭の主題が支配的で、小協奏曲的な要素が強いものの、フランス的な軽快さと明るい色彩感といったサン=サーンスの特徴が随所に見受けられ、シューマン、ドヴォルザークのチェロ協奏曲と並んで、ロマン派の重要なレパートリーと言うことができるだろう。
楽器編成は独奏チェロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)