2000年10月 1日

エヴァルド/五重奏曲 第1番

Quintett Nr.1 bmoll,op.5
Victor Evald (1860-1935)

五重奏曲 第1番 変ロ短調 作品5
ヴィクトル・エヴァルド

 19世紀の多くのロシア人音楽家がそうであった様に、ヴィクトル・エヴァルドもペテルブルグの工業学校の教授、技師を本職とした音楽家で、音楽事業家・出版者として当時有名であったミトロファン・ベリャーエフ Mitrofan P.Belyaev等と共に弦楽四重奏団を結成し、チェリストとして彼のグループで活躍したほか、室内楽の作曲家、北ロシアの民謡収集家、そしてホルン奏者としても活動していた。
 彼の作曲家としての活動時期は2つに分けられる。前期の作品は《弦楽四重奏曲》作品1(1893)、《チェロとピアノのための2つの小品》作品3(1894)、《弦楽五重奏曲》作品4(1895)等で、これらは前述のベリャーエフのグループのために作曲されたと考えられる。この後作曲活動はしばらく中断されるが、1912年頃から再開され、3曲の金管楽器のための五重奏曲が作曲された。
この曲の初版は1912年にベリャーエフによって出版されたが、いつ、何の目的で作曲されたのかについては定かではない。オリジナルの編成は、コルネット2本、E♭管のアルトホルン、B♭管のテナーホルンまたはバリトン、そしてテューバといったもので、ほかの2曲の金管五重奏曲もこの編成を取っている。3楽章ともオーソドックスな形式、和声法が用いられているが、そういった伝統的手法とロシアの民族的要素がうまく結合されており、歴史の浅い金管室内楽曲の重要なレパートリーとなっている。
尚、ヴァツラフ・チェルベニー Václav F.Cervený等による金管楽器の改良と演奏能力の向上、それらのロシアでの普及が、彼の金管五重奏曲における弦楽器的イディオムの模倣に貢献していることは注目されるべきことであろう。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)