2000年10月 1日

ベートーヴェン/ソナタ ヘ長調 作品17

Sonata F Dur op.17 (for Horn) (1800)
Ludwig van Beethoven(1770-1827)


ソナタ ヘ長調 作品17 (ホルンのための)
L.v.ベートーヴェン

 当時最も有名なホルン奏者プント G.Punto(本名はシュティヒ J. W. Stich)の知遇を得たベートーヴェンがウィーンにおける彼の演奏会のために一晩でかきあげたといわれるソナタ。ベートーヴェンのその他の作品の創作過程からみて、このようなまとまった作品が一晩でかきあげられたということには疑問の余地があるものの、当時としては珍しい組み合わせであるこの特殊な作品が、プントという特殊な演奏者との出会いによるものだという点はまず間違いないだろう。当時のホルンはまだナチュラル・ホルンと呼ばれるヴァルヴのついていない楽器で、唇の形や右手の構え方、管の長さの変更、といった技術を駆使して半音階を演奏しなければならなかったので、非常に難度の高い楽器であった。プントはこの楽器の名手で、独奏者として非常な人気を博していたという。この曲のホルン・パートも彼の名人芸を発揮させるべく作曲されており、初演は1800年4月18日プントとベートーヴェンによって行われた。翌1801年には出版の運びとなり、ウィーンのモロ社から初めて出版されたが、そのときの表題は《ホルン又はチェロを伴奏とするピアノのためのソナタ》というものであった。初期のソナタにはこのような「~を伴奏とするピアノソナタ」という表記がよく見られるが、事実そのようなコンセプトで作曲されたものであり、このソナタにおいてもピアノ・パートが重要な位置を占めている。チェルニー C.Czernyによると、出版時に付加されたチェロ・パートはベートーヴェンによるものであり、このチェロ・パートにはオリジナルのホルン・パートにさらに追加されたフレーズが所々にみられる。

第1楽章 アレグロ・モデラート、ヘ長調、4/4拍子、ソナタ形式。
第2楽章 ポコ・アダージョ・クアジ・アンダンテ、4/4拍子、ヘ短調。楽章と呼べるほどの規模ではなく、寧ろ第3楽章への序奏をなすものである。
第3楽章 ロンド、アレグロ・モデラート、ヘ長調、2/2拍子、ロンド形式。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)