2000年10月 6日

堀悦子/3本のフルートの為の2章

Two movements for three Flutes (1965)
Etsuko Hori (1943-)

3本のフルートの為の2章
堀悦子

 堀悦子は作曲を石桁真礼生に師事し、昭和42年(1967)年TBSの委嘱による「ティンパニにチェロとオーケストラの為の協奏曲」を発表、これを出世作とし、前後して毎日音楽コンクールをはじめとした多くの賞を受けている。同年作曲家の会・環を旗揚げした。
 この作品は昭和40(1965)年に作曲され、同年行われた前述の毎日音楽コンクール作曲室内楽部門第2位に入賞した作品である。作曲者はこの作品に対して次のようなコメントを述べている。

「管楽器の中でも、フルートが本来持っている個性の一つには、人間の”息吹”や”呼吸”の要素が持つ音に対する影響力と、その音楽的特性を直截的に反映するという点があると思われます。この作品は、そういった特性を中心に、三本のフルートによる同属楽器のアンサンブルが作り出す音の世界を、三重奏という演奏形態が作り出す面白さ、楽しさといった点をも含めて、多面的に構想、表現したものです。」

 初演は同じく昭和40(1965)年、日比谷公会堂において林リリ子、宮本明恭、小出信也の三氏により行われた。編成は1番フルート、2番フルート(ピッコロ持ち替え)、アルトフルート(3番フルート持ち替え)という編成を取っている。(アルトフルートは通常のフルートの4度下のG管の特殊楽器である。)
 アルトフルートのカデンツァによって始まり、そして締めくくられる第1章と、4+3の7/8拍子で対位法的な第2章は、緩急の関係にあり、アルトフルートのような特殊楽器やフラッター・タンギングといったような特殊奏法が用いられているものの、両楽章の構成や動機の扱い方などは古典的手法の延長線上にある。また、全曲にわたって細やかなダイナミックの変化が要求されることは、作曲者自身のコメントにも見られるように、”息”=”息吹”の影響が音に直接反映するこの楽器の特性を活かしての事であろう。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)