2000年10月 1日

カステレード/協奏的幻想曲

Fantaisie Concertante (1960)
Jacques Castérède (1926-)

協奏的幻想曲
ジャック・カステレード

 テューバという楽器は19世紀前半、ロマン派の時代に開発されたものであるが、当時の楽器製作者らによる開発競争の影響から、現在に至っても各地域によって名称、形状、調性の異なる楽器が幾つか存在する。この《協奏的幻想曲》は、バストロンボーン、テューバ、サクソルン・バスのいづれかとピアノのための曲という指定がなされているが、ここでいうテューバとは一般にフレンチ・テューバと言われる楽器で、通常オーケストラで使われるC調のテューバの1オクターヴ上の小型の楽器である。サクソルンはサクソフォーンの発明者として知られるサックス A.Saxの発明した(そのためか専門書においてもこの2つが混同されることが多い)ピストンをもつ金管楽器で、ソプラノからコントラバスまでのグループから成り立っており、各楽器間の音色の統一が図られていた。現在ではサクソルン・バスはフランスにおいてのみ用いられているものの、その他の楽器はほとんど使用されていない。

 フランスの管楽器のための作品という分野においては、パリ国立高等音楽院の卒業課題として作曲されたいわゆる「コンクール用小品」の果たす役割は大きい。この曲もそういった作品の一つで、パリ国立高等音楽院のバストロンボーン、テューバ、サクソルン・バス科の前教授ベルナール P.Bernardに献呈されている。作曲者のカステレードはパリにおいて教鞭をとっている人物で、室内楽曲からオーケストラ曲に至る幅広い分野での作品を発表している。曲名が示すようにソロとピアノは協奏的な関係をもっており、アッチェレランドやリタルダンド、頻繁に起こる拍子の交替といったリズム構造を用いたファンタジックな性格が特徴的である。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)