2000年10月 6日

ヒンデミット/バステューバ・ソナタ

Sonate für Basstuba und Klavier (1955)
Paul Hindemith (1895-1963)

バステューバ・ソナタ
パウル・ヒンデミット

 作曲家、演奏家、指揮者、教育者など多くの分野で多大な功績を残したヒンデミットは、作曲技法からみて3つの時期に様式区分できる。つまり、ブラームスの影響下から始まり独特の対位法的書法に向かった第1期(1923年頃迄)、「新即物主義」と称された反ロマン主義的様式を確立した第2期(1924-34年)、堅古な調性システムを基盤として新古典的様式に進んだ第3期(1934年以降)である。
 第3期において、彼は管弦楽を構成するあらゆる楽器を使ってソナタや協奏曲を作曲しているが、この《バステューバ・ソナタ》はその中でも最後に位置している作品である。1955年の作品だが、初演についての詳しいことは判っていない。1953年にヒンデミットはアメリカからスイスに移住し、同時期の作品としてはカンタータ《天しよ急ぎ行け》 Ite, angrli veloces(1953/55)、《二つの歌曲》 Two songs (1955)、オペラ《世界の調和》 Die Harmonie der Welt (1957)を挙げるに留まる。《バステューバ・ソナタ》は調性や音楽的重力といったものに基盤を置いた第3期の特徴とはやや離れた位置にあり、調的にはかなり自由な立場で作曲されている。形式的にはオーソドックスで、2つの特徴的主題を持つ第1楽章、スケルツォ的な第2楽章、4つの変奏からなる第3楽章(このテーマにおいて、反12音主義者であった彼は戯れに音列を用いている)からなっている。この曲は、テューバを独奏楽器として用いた極めて初期の例としても、重要な位置を占めている。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)