2000年10月24日

ロジェ=デュカス/オルガンのための牧歌

Pastorale pour orgue
Jean Roger-Ducasse (1873-1954)

オルガンのための牧歌
ジャン・ロジェ=デュカス

 ジャン・ジュレ・エマーブル・ロジェ=デュカス Jean-Jules-Aimeable Roger-Ducasseはフランスのボルドー生まれで、パリのコンセルヴァトワールでフォーレに師事し、1902年にローマ大賞の2位を受賞、1935年からはポール・デュカ Paul Dukasの後任としてパリのコンセルヴァトワールの作曲の教授となった作曲家である。彼の作品は非常に質が高いにも関わらず、残念ながら今日その多くはあまり演奏されていない。
 彼の音楽は、ヴァンサン・ダンディ Vincent d'Indyがフランクを出発点としたのと同じようにフォーレとドビュッシーに由来している。彼はドビュッシーの新しい和声語法に深い影響を受けて、ロマン派の調体系から彼の師フォーレの否定するような非伝統的な和声語法へと移り変わって行った。また、ルネッサンス期の多声音楽やバッハの対位法に深い興味を抱き、彼の作品の幾つかにはそれらの影響が如実に表れている。彼のピアノ作品は複雑且つ技巧的で常にエレガントである一方、多くのオーケストラ曲は非常に色彩的で、一つの単純な動機が次第に大きなクライマックスを築くといった形式を持つのが特徴である。
 この《オルガンのための牧歌》 Pastorale pour orgue(1909年出版)は、20世紀フランスオルガン音楽においてもユニークな作品である。これは、先の両分野のそれぞれの特徴を同時に備えており、演奏に際しては技巧的である一方、形式的には冒頭に現れる動機が色彩的な変化を帯びて次々と変奏されてクライマックスへと向かっていき、再び元の静けさへと戻っていく。
 この作品はナディア・ブーランジェNadia Boulangerに献呈され、アレキサンダー・ギルマン Alexandre Guilmantによって初演された。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)