2000年10月26日

シューマン/アダージョとアレグロ

Adagio und Allegro op.70 (1849)
Robert Schumann (1810-1856)

アダージョとアレグロ 作品70
ロベルト・シューマン

ロベルト・シューマンの生涯において室内楽が創作の対象となった主な時期は、1842年のいわゆる「室内楽の年」の他に、1844年から1850年にかけてのドレスデン時代、1850年から1856年にかけてのデュッセルドルフ時代を挙げることができる。 この《アダージョとアレグロ》は、第2期に当たるドレスデン時代の後期、1849年に作曲されている。この年に作曲された他の室内楽曲としては、クラリネット(若しくはヴァイオリン、チェロ)とピアノのための《幻想小曲集》 Fantasie-stücke op.73、オーボエ(若しくはクラリネット、ヴァイオリン)とピアノのための《3つのロマンツェ》 Drei Romanzen op.94、チェロ(若しくはヴァイオリン)とピアノのための《民謡風の5つの小曲》 Fünf Stücke im Volkston op.102が挙げられる。このように主奏楽器を変えた諸作品群においては、各楽器の特性を捉えた個性的表現が実現されていると同時に、代用楽器による演奏の可能性も示唆していることは興味深い。また、同年《4つのホルンのためのコンツェルトシュテュック》ヘ長調 Consertstückを作曲していることからも、当時変革の著しかった金管楽器に対するシューマンの興味が伺える。
曲名が示すとおり、アダージョとアレグロの2部から構成されているこの曲の冒頭は、原題が Romanze und Allegroとなっていることからも分かるように、独奏楽器とピアノとの会話を持つロマンティックな序奏部を形作っている。また、2部形式のアレグロとともに、ピアノが伴奏以上の重要な役割を担っている。

(今までいろんな機会に書いた曲目解説。自分の演奏会のものの他、依頼された物も有りますので、テューバ以外の曲もあります。以前この類の情報を収集するのが結構面倒くさかったため、何かの役に立てばと思いここに掲載します。転載自由。)