2002年10月25日

複数の視点

 コンクールやコンサートなどで演奏予定の曲が非常に増えてきたので、どの曲がいつの時点でどのくらい仕上がっていなければいけないのかが俯瞰してばっとわかる様にするため、新たに予定表を作って逆算して日にちを書いていくことに。しかしこういった作業はなんだかんだいって紙に書くのが一番早いですね。書き出してみると現時点が結構な曲数に。表とにらめっこしてその日のポイントを決めていくことに。これは個人的な経験からだけれど、曲数が多いときには一日で全体的につつく曲は一曲、その他の曲はポイントを押さえて、という形でローテーションでまわしていくとある程度全体のレヴェルを維持しつつ、問題点を解決していくことが出来るような気がする。

 先日学校の第三課程の絡みでヴォーン・ウィリアムズをオケと録音。当たり前だけどオケとコンチェルトを演奏することはテューバではそうそう有り得ないので、この機会にと思ってかなりしっかり準備していったつもりだった。が、相当疲れる。結構長い間オケでは吹いていたけれど、指揮者の真横に座るってのはなかなか不思議な気持ちがするものですね。ヴァイオリンの人がテューバの場所なんかに行っても相当面食らうのだろうと思う。セッションは3時間でオケの練習を行いながら同時にばんばんテイクを取っていく方法をとった。始めは結構無難に(ミスをしないように)吹いていたんだけれど、どうせモンタージュするわけだし、と思って途中からはかなり色々と挑戦して録音。やっと慣れてきた、と思ったころには神経的にも体力的にもかなりへとへとになっていて、終わったころにはボーゼンとしている始末だった。それでもオケの人と指揮者に助けれられて何とか全部撮り終ったわけだけれど、ピアノやヴァイオリンのソリストはしょっちゅうこんなことしてるんだ、と思うと結構すごいですね。同じジャンルの音楽をやっていてもそのスタンスや世界の成り立ち方はずいぶん違うんだろうな、と深く考えさせられた。
 こういった体験も非常に得がたいものだったけれど、もう一つすごく貴重だったことは、演奏に当たって色々な意見を頂けた事。ヴォーン・ウィリアムズの協奏曲はテューバ奏者にはもう避けては通れないもので、もう12年くらい延々と練習しているわけだけれど、流石に触っている時間が長すぎてある一つの演奏解釈から遠くへ離れる、ということがとても難しくなっている。今回オケとの絡みについては指揮者から、カデンツァに関しては信頼の於ける人から非常に貴重な意見を頂いた。どちらも長く譜面を見ていたにもかかわらず全然気が回らなかった部分で、今回十分消化して演奏に取り込めた、とはとても言えないけれど、これからの演奏にはチャレンジして変えていかなければいけない。この場を借りて御礼申し上げたい(直接言えよ、って感じですが、まあとにかく)。

 後日録音科(って言うんだろうか)の人に手伝ってもらってモンタージュ。こちらも自分のものをやるのは初めてだったんだけれど、コイツはすげぇですね。テイクを繋ぎ合せてどんどんきれいになっていく。繋ぎ目なんて僕には全然判らないけれど、そこら辺は専門の人が聴くとばっちり判るそうで、すごく丁寧に仕事をしてもらった(そんな助力にも関わらず、本人の演奏がヘタレでダメダメな部分が残ってしまうのは結構落ち込むけれども)。録音の人達の聴き方というのも非常に興味深く、特にアインザッツに関しては素晴らしい判断力があって驚かされた。ほんと、音楽に関わっていてもそこには人によって全く違った世界の成り立ち方があることを今回は痛感しました。それにしても疲れた。

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