2003年1月18日

現代音楽演奏コンクール(~12月8日)

引き続き次の目標は東京の日本現代音楽演奏コンクール。その前に学校の教育学のクラスでテアトラルな曲の模範演奏を頼まれる。カーゲルとルボティエのいくつかの曲を演奏。カーゲルは随分間が空いていて、暗譜がこなれていなかったのが災いして不満足な出来。コンクールに向けてかなり修正を迫られる。
 コンクールは一次、二次、本選で三曲。マレシュのティチューブ(使いまわし)、カーゲルのミルム(使いまわし)、松平頼暁のシミュレーション。二次と本選の間が空いていてそこにノーノの本番が入っているので、結果次第では二往復することに。合間に滞在許可証の更新(疲労困憊する恒例行事)。東京滞在中の練習場所確保と楽器(タムタム)の手配。練習以外の事が非常に多いので、アップや基礎練習は当分諦め、とりあえず差し迫った二次のミルムの練習に費やすことにする。本番では一次のティチューブがホールの響きに慣れるのに時間がかかってなかなかノッた状態が作れなかったのが反省点。一方カーゲルは逆にその響きに助けられてか、今までの中では一番納得が出来る出来だったと思う。どちらにしても、曲を始める同時に(若しくはそれ以前に)会場を曲の雰囲気に持っていく、そういったメンタルな作業はこれからも追及すべき課題だと思う。
一回目の滞在で非常に有意義だったのは、JMLで特殊奏法のレクチャーが出来たこと。今回本当に無理を言って機会を作っていただいたのだが、色々な作曲家の方と話してプレゼンテーションすることが出来たのは僕にとってとても嬉しい出来事だった。同じく、空き日にトランペットの曾我部さんの演奏会に飛び入りで参加させていただけたこともとても楽しかった(皆様、本当に有難うございました)。

 本選に通過したため、二次の翌日に急いで帰国、次の便の予約。帰ったと同時にノーノの仕事がキャンセルになったとのメールが届く。脱力。脱力。脱力。帰ってきたものはしょうがないので、本選のシミュレーションの仕上げに集中する。「シミュレーション」は非常にテアトリカルな曲なので、演奏以外の所作に気を配る。同時にそれらの諸動作が観客に観えないと意味がないので、楽譜が見えてなおかつ動作の邪魔にならないよう、グランドピアノの譜面台と椅子で低めの譜面台をセッティング。暗譜をするという方法もあるのだが、この曲はある意味設計図的な譜面を見てそれをシミュレートしていく過程が大事だと個人的に思う。
 二回目の往復。今回は次の仕事との関係で3日間の滞在(次の仕事がキャンセルになりませんように)。着いたその日に打楽器を選択、翌日の練習場所の確保。本番当日は午前中貸スタジオで練習してホールに移動(楽器、ミュート2つ、タムタムを持って山手線に乗ったんだけれど、後で色んな人に無謀と諭された)。セッティング、演奏。あまりにハードなスケジュールだったせいか、本番後にどっと疲れる。スケジュールからみれば出来はまあまあだっと思うけれど、細かいディティールはもう少しゆっくり練る必要がある。今回の準備の中でなかなか良かったのは、ホテルなどで楽器を吹けない状態でも曲名通り曲を「シミュレート」することで、全体の流れを常に頭の中にストックするコツがわかったような気がすること。曲が上手く進行している場合は、まず今演奏している場所をどう吹くのか、という集中力の方向と同時にもう少し先の部分への準備を行う集中力、さらに全体像で自分がどのポイントにいるのか、といった3つの大まかな気の配り方がある(極めて個人的な印象なので、一般論ではないと思う)。全体像に関しては寧ろ楽器を離れて譜面を見ながら(或いは譜面なしで)練習したほうが上手くつかめると思うのだけれど、今回は曲のスタイルも手伝ってか、練習の配分が上手くいった。もちろんイメージトレーニングは、曲の細部でもとても大事なのだけれど。
 結果は二位を頂いて、こちらも一安心(交通費的にも)。それよりもこのコンクールで色んな方々と知り合えて、演奏を聴くことが出来たのが収穫。随分と刺激になった。もう一つの収穫はソフトケース。前に使っていたのがかなりがたが来ていたのだが、「ここがもうちょっとこうだったらいいのにな」という部分でなかなか良いのが見つからなかった。今回グローバルで購入したソフトケースはまさにその辺りのツボが見事に押さえられていて、大満足(もちろん、個人的に、と言う事だけれど)。ソフトケースをお探しの方、オススメです。
 さて、これで一段落着いて次は上半期総決算のリサイタル。大混乱の予感。