2003年1月19日

リサイタル(~1月9日)

 バタバタと日本から帰ってきたのが12月10日。次の一山は1月9日の学校でのリサイタル。今回の曲はマレシュのティチューブ、松平のシミュレーションに加えて、友人の作曲家鈴木純明の新作、ツェルシのマクノンガン、長年の難物であったビュッケのヴォワ・キャプティヴ。前回から引き続きの2曲は問題ないとして(ある)、譜読みを3曲同時、しかも冬のヴァカンスのため本番3日前までの二週間、ちゃんとした場所で練習が出来ない、というのはコンディションとしてかなり不安。まあプログラムを決めたのは自分なので、自業自得といえばそれまでなんだけれど。
 帰ってきた直後からオケの練習。ほっとする(前回の日記参照)。プログラムは運命の力序曲とリストのレ・プレリュード、展覧会の絵。持ち替えはチンバッソとC管だけなんだけれど、学校のC管用のミュートが紛失していて、展覧会の中で4つの音のためだけにミュートを楽器ごとF管と持ち替え。こういうのって消耗だよな。練習までは滞りなく上手くいっていたのだが、本番で予想外のアクシデント(僕の人生では循環主題的だけれど)。チンバッソとC管の持ち替えのため一旦袖から出て楽器を変えに行っている最中に次の曲が始まってしまう。レジ(ステマネ)も半狂乱で罵倒するし、大体ちゃんとチェックしない指揮者が悪いと思うんだけれど、しょうがないから知らん顔してステージに入っていく。幸い始めの5分くらいはタセットだったので落とした音は一つもなかったが、意味なく罵倒されて機嫌が悪いのといきなりの持ち替えでかなり調子が悪かった。その後も引きずって後味が悪かった。こういう状態でもきっちり出来るのがプロフェッショナルなので、こちらが反省することも多々あるんだけれど。それにしてもなぁ、ぶつぶつ。

 そんなこんなで本番を終えて再びリサイタルの準備へ。きちんとした練習室できちんと音が出せて練習できるのは都合10日間くらいなので、引き続き譜読みのみのメニュー。基礎もそろそろやらないとまずいのだが、このままの勢いでなんとか乗り切ってしまうことにする。この日誌で度々登場しているヴォワ・キャプティヴは結局のところ全体の3割くらいしか仕上がっていない。譜読みを完了してそれからテープとのシンクロ(合わせ)をしなければならないのでかなり不安。新曲もまだ全部は仕上がっていないので全体的な見通しが上手くつかない。焦るままに学校が閉まる。

 とはいえ閉まってしまったものはしょうがないので、出来ることを出来る場所で出来るだけやることに集中する。自宅ではセルパンはそのまま、テューバはミュートである程度の時間練習が出来る(文句が来なければの話だけれど)ので、実際に音を出す以外の時間をどうやって練習になるべく直結するかが課題となる。
 今回随分助けになったのはパソコンだった。まずツェルシはセルパンで移調して吹くことになっていたので、フィナーレで移調楽譜をつくり、同時に細かいリズム分割をして部分部分を把握しやすくする。読むことと同時に MIDIで出力して聴いて覚えていく。はっきり言ってセルパンは音程的には楽器が何もしてくれないので、きちんとした音程を覚えることが不可欠となる。
 新曲も楽譜と同時にMIDIで送って貰ってアナリーゼを行う。今回の編成はサックス、テューバ、オンド・マルトノのトリオなので、どこをどう仕掛ければ最短距離で合わせが出来るのかを楽譜と照らし合わせてチェックしていく。ヴォワ・キャプティヴは時間がないので音源をパソコンに入れてテンポを落とし、合わせと譜読みを同時進行で行いながらテンポをじわじわと上げていく。全ての曲において難しい部分のフィンガリングのみの練習。取りにくい音程のイメージ。以上のことを2週間繰り返して行った。何とか見通しが立ったのは本番の10日くらい前だった。そこから後はリサイタル全体を通して頭の中で構成していくことも加えていく。
 本番3日前に学校が再び開く。本当に恒例行事だけれど、コンサートに関する事務手続きが一切上手く行っていないことを知らされる。(教訓:学校の事務と東スポの見出しは決して信用しない。決して。)生で楽器を吹いて調子を戻しながら事務手続きの再確認。あっという間に本番の日。
 ジェネラルが一時間半しかない上にやらなければいけないことが山のようにある。ステマネが手配されいない上に舞台のセッティングが頻繁に変わるので、その段取りを決めながらトリオの合わせをやって、録音用のチェックをしながらテープ用のスピーカーの設置とバランス、というほんとに地獄のような有様だった。本番ギリギリまでリハーサルをしたんだけれど、残念ながらエレクトロアコースティックのいくつかの事は上手く行かなかった。
 本番ではもうへとへとで何にも考える力がなかったんだけれど、逆にそれが幸いしたのか、メンタル的には今までにない落ち着いた状態で全体を作っていくことができたと思う。もちろんアクシデントもたくさんあったけれども、いくつかの曲の幾つかの部分は今までで一番上手く出来た。

長くなってきたので、反省は次回の日誌に。