2003年1月17日

avant-scenes(~11月9日)

本当にお久しぶりです(って日誌に書くのはなんだか不思議な気がするけれど)。前回の日誌からは3ヶ月近く経ってしまったけれど、別にだらだらしていた訳ではなくて、あまりにやる事が多すぎて日誌まで手が回らなかった。ようやくまとまった時間ができたので、まとまった事を書いて、まとまった事を考えなければならない。取り敢えずは消息を絶った10月終わり辺りからクロノジカルに。

avant -scènesというのは、通っている学校の第三課程器楽科のコンクールで、優勝すると学校オケとコンチェルトができる、というもの。一次が一曲、二次が二日に渡って三曲、二次からは公開のコンサート形式になるもの。僕が吹いたのはマレシュのティチューブ、プロッグの3つの小品、ヴォーン・ウィリアムズのコンチェルト、マドセンのソナタ(いくつかの曲はこのシーズンに長い付き合いになる)。今回の曲は全て譜読みが完了しているので、内容的にもう少し突っ込んでいくのが目標。違う楽器が混ざり合ったコンクール(バトルロワイヤル)でのテューバというのは、マイナー楽器であるということが長所あり同時に短所でもある。つまり、「テューバって要するにド、ソ、ド、ソってやってる楽器でしょ?」と思っている方々(正論だ)にはソロを吹くという事実だけで結構ビックリするらしいし、逆に演奏を聴いて「結局テューバってド、ソ、ド、ソってやってる楽器だよね。」という結論に至ることだってある(正論だ)。今回はこういうのを取っ払ったところまで演奏レヴェルを引っ張りあげれればいいな、ということが一つ目の目標。それぞれの曲の持ち味をきちんと出す事を心がける。もう一つの目標(というより寧ろ目的)は、本番をこなす事によって今後に控えている同プログラムの本番の道標を作っておくこと。どこがどうとはいえないけれど、本番を潜り抜けて初めて得られるステップというものもある。練習ではどうやっても上手く出来なかった(音楽的な、あるいはテクニック的な)箇所が本番で何回も使うことによって自然に出来るようになった、という経験は結構みんなあることなんじゃないだろうか?
 練習は比較的通して行うことが多かった。プロッグのみ、テクニカルな面が多いのと、前回の本番から少し時間が経っていることもあって例のごとく半分のテンポからの練習。他の曲はピアノとの合わせで(久しぶりだ)曲の要所要所の仕掛けを作っていく。
 本番は自分としてはまずまずの合格点。不思議なことに一番懸念していた曲が一番上手くいって、安心していた曲でなかなか苦労したように思う。評を聞いても大体自分の印象と一致していた。結果は審査員一致の一位を頂けて一安心。3月にコンチェルトを吹くことになる。しかし審査員全員から聞かれたのが「あなたの使っている楽器は結構年代物なのか?」という質問だった。単純にノーラッカーで磨いてもいないので凄く汚いだけだったんだけど。
 本番の翌日同じ曲で小さな演奏会。こちらは気が抜けてしまったのか心残りな演奏になってしまった。メンタル面でもう少しタフにならなければ。

 今回の本番が近くなったある日恩師の訃報に接する。こちらに来る直接のきっかけになった人だった。あまりの急な知らせに自分がこの出来事にどう接すればよいのか、実感が湧かない。悲しい。言うまでもなく。しかしこの事を現実的に現実として受け入れるようになるにはまだ時間がかかるのだろうと思う(この日誌を書いている今現在も自分の言葉として何か表すことはまだ出来そうにない)。
彼の言葉。
「いいかい、人生は決して音楽だけじゃない。色々な出来事が起こる。それぞれを一生懸命やるんだ。展覧会に行ったら絵を100パーセント観る。女の子にふられた時は100パーセント悲しみなさい。それと同じように、音楽をやるときは本当に100パーセントでやるんだ。本当に。」