2003年4月12日

コンチェルト(~3月5日)

 ガウデアムスのコンクールから帰ってきて引き続きコンチェルトの演奏会。これは11月のというコンクールの受賞記念演奏会。今日はもうお馴染みというか、ヴォーン・ウィリアムズのコンチェルト。ガウデアムスで現代曲ばかりをやった後の気持ちの切り替えがなかなか上手くいかない。練習は実質一日で、オーケストラの(特に)弦パートはとても弾きにくく書いてあるので(これはどこで誰に聞いても一様に返ってくる答え)、なかなか大変なセッションだった。
 最近はコンチェルトの訳語としては「協奏曲」というのが定着しているけれども、実際ソリストの立場からすると「競奏曲」といったほうが正しいように思う。まぁあくまで個人の印象なんですが、少なくとも「協調」という要素よりは「競争」という要素が強いと感じる。とにかくピアノ伴奏のヴァージョンとはまるで違う曲を吹いている感すらある。これはオーケストラの気質とかレヴェルとかオーケストレーションとかという問題というよりも寧ろ「一対多」の構図からくるもので、指揮者を含む何十人の演奏家相手に「俺はここをこう吹く」という意思表示を常に強く示さなければならない、というスタンスはピアノ伴奏のときのデュオ的な駆け引きとは全然種類の違うものである。というわけで、「強い意思表示」という部分と「曲の完成度」(つまりある程度「保険」をかけた吹き方)という相反する部分のバランス取りというのはかなり難しい。もちろんボーっとしたノーミスのコンチェルトなんて面白くもなんともないんだけれど。
 もうひとつ今回のセッションで面白かった、というか今後の精進の対象になることは、「後ろのオーケストラがトゥッティで鳴っているときにソロパートをどうやって浮き上がらせるか」という問題で、日頃は同じ状況下では寧ろ一体化することを目的としているために所々の部分でかなり戸惑った。大きめに吹く、というのはもちろんひとつの解決法ではあるんだけれど、それにしたって限度というものがあるし、どうしたものかと思っていたんだけれど、ジェネラル(ゲネプロ)の時に聞いてくれたプロフが言うには「後ろのオーケストラの響きを聴いて、その響きの隙間を狙ってそこに入り込むこと」。理屈としては判るけれども、なかなか難しいですよね、これは。もう少し判りやすく考えれば、オーケストラが鳴っている(或いは客席でこう鳴っているだろう)時にその音響を客観的に聞いて、そこに自分のパートがどういう感じで入ってくるべきなのかを具体的に想像し、それに近いサウンドのアプローチをする、ということなんだろうけど。色々考えて本番でもやってみたけれど、上手くいくところも確かにあった。一般的に言ってピアノやヴァイオリンといった楽器に比べるとテューバという楽器は(コンチェルトでは)埋もれやすい傾向を持った楽器なので、この点は今後大いに考えるべきだと思う。
 なんだかんだあったものの、本番はとても楽しくできた。オーケストラも熱演だったし、個人的にもミスはあったもののやりたいことはだいぶできたと思う。
 次は「一対多」から一転して「孤独」、動物園の音楽の仕事の話。

コメントする