2003年12月24日

2003年度上半期総括(3)Concours NICATI 2003

 入学試験4日後にコンクール。もう無謀というか、馬鹿げてます。しかも次回詳述する新曲の練習の合間を縫っていたので、3ヶ月経った今ではもう何をどういう順番でやっていたのか、いまいちはっきりしないんだけれど。ただ、テューバがエントリーできるコンクールというものが世の中に絶対的に少ないため、このような強行軍はある程度止むを得ないということはある。
 このコンクールはスイスにあるビエンヌという町で行われた現代音楽演奏のコンクール。今回はソロのみということで、用意した曲は
Jaques DEMIERRE / The case of Mr. V pour tuba solo (1985) 7 min.
Yan MARESZ / Titube pour tuba solo (2001) 8 min.
Leo BACHMANN / Palette of Sounds(1993-2000) Out of Shape 4 min.
Mauricio KAGEL / Mirum pour tuba solo (1965) 15 min.
Krzystof PENDERECKI / Capriccio pour tuba solo (1980) 4 min.
Jaques REBOTIER / Pourqoui tu m’aimes plus ? pour tuba solo (1991) 3 min.
Gérard BUQUET / Voix Captives pour tuba solo et bande magnétique (1987) 15 min.
の7 曲。規定にあるスイス人の作曲家の2曲以外は既に演奏済み。練習は主に新曲の譜読み(DEMIERRE)。このコンクール、一次ではテアトリカルな曲はダメ、即興もダメということで、レパートリー的にかなり不利な状況に(REBOTIER、KAGELが使えない)。一次ではDEMIERRE、MARESZ の2曲だったんだけれど、見事一次敗退。
 演奏としては個人的にある程度満足できる出来だったけれど、他の人の演奏を聴いてみればこの結果は納得。この手のコンクールは演奏レヴェルは勿論のこと、レパートリーが大きなポイントになるのだが、残った人はその両方が上手くいっていた。結果の後審査員に講評を聞きにいったんだけれども、口を揃えてレパートリー(DEMIERRE)がつまらなかった、との事。MARESZがもしつまらなく聴こえていたとすればこれはもう間違いなく僕の責任で、そこは深く反省するわけだけれども、もう一曲のDEMIERREについてははっきりと作曲者の責任を糾弾したい。
 もともとこの手のコンクールは、開催国の曲をレパートリーに入れることを規定してある場合がほとんどである。その国の現代音楽の作曲者のを知るのによい機会だし、補助金の関係もあるのだろう。このことに関しては僕も特に異論はないが、例えばテューバのようなマイナーな楽器の場合、調べてみたら入手可能な曲は上記2曲(DEMIERRE、BACHMANN)だけだったという事だって多々ある。こうなると選ぶもなにもないし、そして些か諦めながらも文句はないわけだが、その曲がキチンとした曲でなかったら、演奏者としては手の打ちようがなくなる。BACHMANNのほうは楽譜というより即興のインストラクションだったので(これを作曲として売ることにもちょっと疑問があるけれど)、それなりに自分で工夫することはできたかもしれない。しかしDEMIERREの方はもうハッキリといってスケッチ以上の何物でもなく、こういった曲を目の前に持ってこられても溜息以外の何も出てこない。もちろん、世の中の多くの曲はコンクールで効果的に聴こえることを目的として書かれるわけでは十分に承知しているけれど、本人が意図したことがその楽器できちんと出来るのかどうかといった検証が全く、本当に全く成されていない曲を出版社が売り物としてリストに載せるのはどうなのだろうか?
 このサイトは基本的に個人を攻撃するようなことを極力避けるようにしているけれども、このことだけはどうしても声を大にして(テキスト表示を大にして)言いたかった。例外だと思って下さい。尚、「演奏技法上不可能な曲=ダメな曲」と言っている訳でもないです。この辺りをテキストで説明するのは難しいですね。演奏するなり、聴くなりすればそのラインは一発で判ると思うんですが。いずれにせよ、テューバの楽譜のような世にあまり流通しない楽譜の場合、編成だけで中身を見れない状況で買わざるを得ない場面が多々あります。そうなるとこういった場面に出くわすことが確率的に多くなる。なんだか泥沼ですが。

P.S. ビエンヌ(Bienne)は手ごろな大きさの町で、とても感じのよい所だった。楽器なしだととても寛げそうです。

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