2004年1月26日

クロード・バリフ個展

 先月から準備をすすめていた「solfeggietto」の本番。この曲の一番難しいポイントは非常に小さい音量で速い動きを伴なったフレーズをどう処理するか、といった点。楽譜上にはppppや「慎重に」、「消えいるように」といったデリケートな楽語が並んでおり、かといって極限まで音量を絞り込むと速い動きに対応できず、リスクも増える。
 今回演奏会に望むにあたって目標とした事は、譜読みから本番までの練習を最適化すること。今までは曲の練習に関してはあまり方法論を突き詰める事が出来なかったので、無駄に練習している時間が多かったと思う。今回は曲そのものを練習する時間は一日一時間以上取ることをあまりせず、寧ろ限られた時間の中でどう本番に持っていくか、ということを考えた。
 12月半ばの時点で譜読みを始めたときは音楽的にどう構成すべきなのか、したいのかが見当がつかなかったため、ほぼメカニカルな練習に終始。一つの楽章を問題なく吹けるテンポで5回繰り返して終わり、というサイクルを作ってまず曲に「慣れる」事から始めた。もう一点、何回か書いた事だけれど暗譜を試みた。音程、リズム、指使い、テクニックのコンビネーションに関しては、セクションごとで良いので反射的に体が動くところまで暗譜すれば、実際に楽器を持ったときに成すべき事が非常に軽減される。これは今回の準備の中で一番効果的だった。
 逆にもう少し突っ込んだ方が良かったのは、この曲以外の他のCD、楽譜を見る事。当然のことだけれどその作曲者の他の曲から独特の語法を学ぶなり、同時代の作曲家と比較するなりといったことをもう少し時間を割くべきだったと思う。これは後半メカニカルな部分を離れて実際に音楽表現を考えていくときに不足気味だったと思う。
 ある程度準備に対しての試みが上手くいったこともあって、本番に対するストレスのようなものは殆ど無かったけれど、今後の問題点としては、
1.小さいダイナミックスのコントロール。他の楽器と比べて金管楽器は(基本的に発声に関してはon/offの楽器なので)ピアノで演奏するときのリスクが非常に大きい。ある程度の大きさを維持しながらピアノのテンションを出す、またはその逆といった小さいダイナミックスで出来ることの幅を今後考えるべき。それを可能にするブレスコントロール、唇のフレキシビリティ。
2.イメージをもっと強く打ち出せる事。例えばフォルテでアグレッシヴなフレーズを吹く場合、一応楽譜どおり、楽語どおりにはなっているんだけれど、ある一つの楽想が頭の中ではっきりとイメージできていたかどうかは疑問。。楽器にインプットする以前の段階のイメージをもっと強く持つ事が今後の課題。