2004年2月 3日

マスタークラス:ミシェル・マッソー

 マスタークラス怒涛の三連発のラストはベルギーのテュービスト、トロンボニストのミシェル・マッソー(Michel Massot)。彼はジャズから現代音楽まで幅広く活動していて、今回はCNSMのサクソルン・ユーフォニアム科の招きでフリー・インプロヴィゼーションについての講座。クラスの大半はフリー・インプロヴィゼーションは初めてということで、色々と音を限定しながら(1音だけ、2音だけ、ノーマルな奏法だけ、特殊奏法だけ)ソロ、アンサンブルで即興を行い、皆でディスカッションしていく、といったもの。個人的に興味があったのは、即興における各人(各ライン)の独立性。彼は複数で即興する場合にそれぞれが徹底的に独立したものであるべきだと強調する。つまりあるフレーズに即座に反応して応答する場合、それは大概に於いてよい結果は生まない、逆にそのフレーズを演奏している奏者のチョイスを大幅に狭める事になる。異論がある方もいらっしゃると思うし、フリーなんだから良いも悪いも無いだろ、という方もいらっしゃるかもしれないけれども、僕は個人的にはこの意見に賛成である(もちろん彼もこの事を全否定しているわけではないが、上手くいくことは稀だ、というスタンス)。もう一つは即興で大事な事は適切な場所、時間を捕らえる事。自分がアンサンブルでもソロでも即興に入っていく場合、全体の流れからどこに自分のスペースがあるのか、どの瞬間に入るべきなのか、この見極めが大事だということ。この考え方は即興でなくても演奏についてまわる問題で、確かに記譜してある音楽の場合には演奏者のとれるチョイスは即興のそれと比べて狭められているけれど、逆にそれであるが故に狭いゾーンの中でどのスペースにどの瞬間でどのような音を入れていくのか、これは演奏のよしあしを決める大事なファクターだと思う。
 この何日間かで面白いセッションやマスタークラスを受けて、考えるべき多くの点が見つかった。こういう風に短期間に続く事は珍しい。その多くはまだ上手く文章に出来ないし、ここに書いた事もなんとなく本当のポイントにぴったり嵌っているという感じではないけれど。