2004年11月 9日

○●を△する。

6月後半。ジャック・ルボティエの新作のスペクタクルの準備のためにアヴィニヨンへ。演劇、スペクタクルの世界はそんなに深く関わっているわけではないので、仕事に対するペースの作り方がまるっきり違うのが大変興味深かった。今回は7月後半に10回の公演のために、一ヶ月前から練習を開始。主なスタッフは 3ヶ月前くらいから現地入りしていたようだ。夏のアヴィニヨンというとこれはもうあの有名な演劇のフェスティバルで街はごたごたしているらしい。らしいというのは我々が滞在していたのは川を挟んだ対岸のヴィルヌーヴ・レ・ザヴィニヨンだったので聞こえるのは電車の通る音と鳥の声というくらいのどかなところ。会場であり宿舎でもあった場所は昔の大きな修道院で、これはとても雰囲気のよい建物だった。
 今回自分が何をやるのか、といった事は事前に全然知らされてなかったので、ほいほいと楽器(テューバ、セルパン)を持ってTGVに乗り込んだわけだが、現地についてみるとどうやら楽器はあまり吹かなくても良いらしい。というかまだそこんとこは出来てないからヨロシクみたいな感じで、そのスペクタクル中で喋るテキストを渡される。やたらと俗語が多くて全然訳判らなかったので(辞書にも載ってないし)、演出の女の子に発音も兼ねてレクチャーしてもらう。教えてもらっているうちにどうやらこのテキストはあっち方面のそれはもう放送では絶対使えないような単語のオンパレードだったことが判明。あっち方面というのはこっちじゃないあっちですよ。それならそうと言ってくれよ。おもっくそ女の子に「○●ってどういう意味なんですか?」とか聞いちゃったじゃねぇか。ていうかこれ公衆の面前で言うのかよ。
 とか言って悪戦苦闘しているうちに一週間だけ練習を抜けて日本に帰る事に。此方はブラス・エクストリーム・トウキョウの演奏会。夏の夕暮れにビール片手に演奏会、という個人的には演奏するより聞く側に回りたいような魅力的な企画なんだけれども、こういう演奏会と我々が用意した(一部おどろおどろしい)プログラムは果たして方向的に一致しているのか?という心配があった。しかしながら一曲ごとに率直な反応が返ってきたことはとても嬉しかった。ポジティヴな反応もあったし、勿論ネガティヴな反応もあったと思うんだけれども、それは曲の出来というよりは演奏の出来に返ってくるものであったように思う(個人個人の曲の好き嫌いは当然あるとしても)。僕個人は現代音楽を啓蒙するというような考え方はばかばかしいと思うし、自分が面白いと思ったものをどう表現するかという点で日々悪戦苦闘しているわけで、こういうダイレクトな反応がもらえる場所はとても貴重だったと思う。ご来場の方々、関係者の方々、ありがとうございました。