2004年11月10日

夏時間。

 というわけで再び時差を7時間戻してアヴィニヨンへ。一週間抜けているうちに雰囲気は本番モード(こっち方面)になっていてやや焦る。日夜を惜しんで放送禁止用語を復唱する姿はどう考えてもマトモとは言いがたいが、自分ひとり出遅れているのでしょうがない。因みに他の人のテキストにはそういった放送禁止用語の影は見られず。人を見てテキストを渡しているのか?とはいえ、それなりのおいしいポジションであることは間違いない。
 台詞の事ばかり頭にあるが、肝心の楽器のほうはどうなったのか?結果として今回の楽器での役回りは、複数の会場を移動する観客のナビゲート的な信号的役割である事が判明し、幾つかのスケッチを元に即興でこなす事に。即興はよしとして、楽器持ったまま100メートルくらい全力疾走して直ぐ吹くとか、南仏特有のミストラルがびゅんびゅん吹きまくる野外でアルペンホルンを吹くとか(風のせいで楽器が揺れてマウスピースが口から離れていく…)、予想外に体力仕事だった。台詞のほうは大笑いする人もいれば本気で怒っている人もいて、それぞれの反応がとても面白かった。
 前回も少し触れたけれど、演劇の世界での本番までの持っていきかたと、(オーケストラのような)クラシック音楽のそれとは天と地ほどの違いがあるように思う。演劇では台詞を覚えて、振り付けをして、演出をして、通し稽古をして、と「組み上げていく」課程での共同作業の時間が非常に多い。また、舞台や照明、その他の予期しない問題が多々発生するので、練習時間に関しても大まかなプランニングで、朝から晩までかかりっきりというのが多い。当然、練習の時の気の張り方はオケの仕事のようなときとまるで違う。クラシック音楽では短期間で要求を仕上げるスキルが重要視されるし、演奏会までの一連のプランニングは非常にシステマティックに洗練されている。公演に関しても演劇では一回仕上げたものはかなりの回数をこなすが、オーケストラで全く同じプログラムが20回を超えることはあまり無いように思う。(むしろ一回性に特徴がある。)どっちが良い悪いというのではなく、公演に向かってのこの両者の違いは、自分の練習のプランニングを考える際にも有効だと思う。そういえば全然練習日記になってないな。