2006年11月30日

ケージ「チューバのためのソロ」演奏ガイド その一

これから数回にわたってケージの「チューバのためのソロ」を演奏するにあたっての準備を備忘録的に記していこうと思います。

この曲は「ピアノと管弦楽のためのコンサート」"Concert for piano and orchestra"(1957-58)という ピアノと13の管弦楽器用パートのための曲の一部(といっていいのかどうか)で、それぞれのパートはその全てがソロ作品としても、あるいはどのような組み合わせの上演も可能というものです。また、12/21のコンサートで予定されているように他の歌曲と組み合わせることも可能です。

チューバのパート(ソロ)は時間軸は任意になっているものの、音の高低は通常の五線譜を用いており、その意味においてはかなり「クラシック」であると言えるかもしれません。しかしながらその中で指定されている奏法はハーフヴァルヴがあり、ハイトーン(ダブルハイF)があり、唾抜きを空けたままの奏法があり、とかなり実験的な要素もあることに注目してよいと思います。単純に比較できる問題ではありませんが、チューバのための曲として最も最初期と言ってよいヴォーン・ウィリアムズの協奏曲が1954年、ヒンデミットのソナタが1955年の作曲であることを考えると、この曲が1957年から58年にかけて作曲されたことは(奏法上の点から)なかなかに興味深く思えます。次回は奏法を詳しく追っていきたいと思います。