2009年5月18日

「ハルモニカ」覚書その2:曲目解説その2


前エントリからの続きです。

「作曲の過程では、まずテューバの音響的な特性と演奏法がオーケストラ自身の音色と演奏法へと参照され、そうすることでオーケストラの様々な演奏法に更に展開された。ソリストのパートは作曲の最後の段階で、オーケストラパートが前述の過程を経て完成した後に付け加えられた。ソロパートの役割はソロ的役割であり、複合的な役割を果たす伴奏的役割でもあり、その間を行き来する。」

こちらに関しては少し補足を。

この曲のタイトルには「テューバソロを伴う大管弦楽のための」と書かれており、その名の通り管弦楽パートが主体を受け持ち、ソロのパートはソロ-オブリガート-伴奏の間を行き来します。そのようなソロについての取り扱い方が、この作曲の過程からも窺えます。

また、ソロパートには幾つかの場所で、複数の選択肢が与えられています。
この理由は、ソリストの可能な特殊奏法、音域、または楽器の違いによって、可能不可能が大きく変わってくることに起因します。と同時に、前述のようにソロパートが後付される作曲過程から、一種のヴァージョン違いのような形を取っています。

現在手に入る楽譜はブライトコプフから出版されているフルスコアですが、この中で既に多くの場所で[ossia]として音域や奏法に細かな選択肢が与えられています。加えて演奏用のソロパートとの間でも既に細かな違いがあり、更に、ジェラール・ビュッケが演奏した手稿譜では大きくフレーズが書き足されている箇所もあります。

今回の演奏ではその3つの差異を全て検討して、2009年度版ともいえる総合的なソロ・パートを目論んでいます。