2010年10月25日

低音デュオ各曲解説:科学論文の形式によるデュオ(2009/2010)

さて、そろそろ11/04@門仲天井ホールでの低音デュオ3rdライヴで演奏する曲をご紹介していこうと思います。まずは、昨年のライヴで初演した、田中吉史さんの「科学論文の形式によるデュオ」。田中さんにはテューバとピアノのために「ブルーノのアウラ」という曲も書いていただいたのですが、「語ること」「話すこと」と音楽を独特の方法で結びつける、とても興味深い方法で曲を書いていらっしゃいます。以下ご本人による解説。


科学論文の形式によるデュオ(2009/2010)

バリトンとチューバが学会発表をする。この手の学会ではままあることなのだが、研究領域の専門化が進みすぎて、内容を完全に理解できる人はほとんどいない。聴衆の多くは、部分的にしかわからない彼らの発表を、ひたすら続く音の流れとして体験している--まるで音楽のように。
「科学論文の形式によるデュオ」は、このような体験をシミュレートしたものだともいえる。科学論文(この作品においてより厳密に言えば、実験心理学における論文)の書き方というのは、細かいところまで様式化されており、この作品もそれに従っている。すなわち、全体は「概要」(abstract)、「目的」(purpose)、「方法」(method)、「結果」(results)、「考察」(discussion)、「結論」(conclusion)より構成されており、細部に関しても所定の様式に従っている。
なお、ここではある記憶実験が報告されているが、学術的な研究報告としてではなく、我々は科学論文と共通した構成を持つ別のものとして聴かれることを望んでいる--まるで音楽のように。
昨年の「低音デュオvol.2」で発表されたが、今回はさらに推敲された形での発表が行われる。

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